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七五書店/熊谷隆章さん

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【第30回】七五書店 店長 熊谷隆章 さん

 

 

 ”本を手にとってもらうためにやれることを
 
常に考え実行していきたい”

 

 

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七五書店 店長  
熊谷 隆章(くまがい たかあき)   


愛知県名古屋市出身。書店員歴18年。大学時代に同店でアルバイトを始め、その後正社員となり店長へ。
5年前の売り場面積の縮小改装をきっかけに、本屋で出来ること、本の可能性をより強く意識するようになる。以降、売り場での小さな工夫から、名古屋の書店のイベント協力など様々な取組みを行う。現在は50名規模の名古屋書店員懇親会(NSK)の代表も務める。

  

   
   
   
   
   
(※記事内容はすべて2016年1月現在の情報です。)  
 

 工業によって発展し、政令指定都市にもなった愛知県名古屋市。住宅街である瑞穂区には、75坪の売り場面積から、”七五書店”と名付けられた書店がある。地元名古屋を愛し、地元の住民に愛される町の書店である。
 今回は同店店長の熊谷さんに、町の書店としての取組みや、代表を務める名古屋書店員懇親会について伺った。

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書店員としての経歴を教えてください。

 学生時代に同店でアルバイトを募集しており、学校と自宅の間にあり通いやすいという理由で応募し、採用されたことで書店員人生が始まりました。
 一番の理由が通いやすさだったのですが、いざ働き始めるとますます本も好きになり、書店の仕事が面白く感じ、どんどんのめり込んでいきましたね。
 大学卒業前には、他業種への就職活動を行いましたが希望通りにいかず、卒業後もアルバイトをしながら就職活動を行いました。その間に店長から、「このジャンルには疎いから、代わりにやってくれないか」と棚を任されることが少しずつ増えていきました。教えられたのはごく基本的なことだけでしたので、あとは他店の売り場を見て学び、自分なりにアレンジすることを積み重ねてきました。その後、社員として入社し、しばらくたった後に店長を任されました。

 

印象に残っているエピソードとそこから学んだことを教えてください。

 5年程前に店舗にカフェを併設する改装工事を行いました。近隣の大型書店との差別化の意味も込められていました。
 75坪の内、25坪をカフェにし、売り場を50坪に縮小しましたので、当然在庫も減らさざるを得ませんでした。そこで、需要があまり無かったジャンルを思い切って減らしつつ、まとまりを意識しながら新しい売り場の形に合わせてバランスを整えていきました。常連のお客さんから「75坪の頃よりも引き締まって良くなった」と評価をいただきましたね。
 逆に言うと、75坪の頃にまだ出来たことがあったのだろうと思います。なので、今は出来ることはひるまずにやろうと意識をしています。
 また改装後からは、自分を含めて3名のスタッフで営業をしています。自分が体調を崩すと業務が回らなくなります。睡眠時間をしっかりと確保し、体調管理を心がけています。

 

 

改装後、始めた取り組みや意識していることを教えてください。

 本に関することを発信するように心がけています。例えばツイッターや店舗ブログでは、入荷した新刊の情報やオススメ作品の写真を載せ、具体的に紹介文章を書いています。本好きでこのような情報が欲しい方にフォローされていますね。

 また、SNSをきっかけに、他県の書店様と繋がりを持ちやすくなりました。例えば、関東の書店で作られたフリーペーパーの配布を始めました。レジ前にコーナーを設けており、毎回楽しみに持っていかれるお客さんが多いですね。

 

     

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七五ブログ  
    

七五書店スタッフが気になる作品や新刊情報、フリーペーパーの最新号などを更新しています。

代表を務めている名古屋書店員懇親会・通称NSKについて教えてください。

 5年前に6名の書店員で情報交換を目的に始めた懇親会です。今は年4回集まり、平均40~50名が参加してくださっています。出版社の営業の方が編集者さんを呼び、地元の作家さんが知り合いの作家さんを呼び、と人伝てで広がっていきました。また、毎回ツイッターで開催の告知をすると、意外なところに拡散され、今まで知らなかった方へ届き、参加につながるケースもありました。毎回初参加の方がいらっしゃいますね。
 最近の活動としては、幹事メンバーが中心になってブックマークナゴヤ のメイン企画のひとつである、作家・堂場瞬一さんのトークイベントを仕切りました。事前の予約受付から会場での著書販売など様々な調整を行いました。当日は会場が満席になりお客さんにも堂場さんにも大変楽しんでいただけました。
 懇親会では時々、「文庫交換会」を実施しています。人数が多いので少し時間がかかりますが、各自持ってきてもらった本の紹介をしていただき、クジ引きで交換しています。皆さん本に関わる仕事をしているので、どの本を選ぶのか、どのように紹介するのか、結構楽しみにしています。紹介する側はプレッシャーになりますね(笑)

 

今後の展望と意気込みを教えてください。

 基本的な品揃えを保持しつつ、少しマニアックな本を仕入れるという売り場作りが認知され、小さいけれど品揃えのよいお店という評価をいただくことが増えてきました。一方で、少しとっつきにくいという印象も付いてしまっている気がしています。奥深さを残しつつ、間口を広げたいですね。
 私の思う町の書店は、日々の暮らしを豊かにしてくれる本や、知らなかったこと・知りたかったことを教えてくれる本に手が届き、見渡せるようなお店です。
 コンパクトな売場を生かして、さらに本を手にとってもらうためにやれることを常に考え実行していきたいと思います。

 

全国の書店員さんに一言お願いします!

 それぞれの書店員はまだ出来る事がある・やりたい事がある、と考えていらっしゃると思います。その熱意の方向性は、お店は違っても一緒だと思います。
 本以外のものを扱うことでも本屋の可能性は広がりますが、従来の本屋の仕事でも、工夫次第で良くなることがまだいっぱいあります。地道にコツコツとやって一緒に頑張りましょう。

 

 

 

 

 

 

       

【書店でも、個人でも参加!ブックマークナゴヤ】

 

【ブックマークナゴヤとは】

昨年で8回目を迎えた、『本』を中心に名古屋の街と人をつなぐイベント。10月10日~11月1日の間、街中でフェアやトークイベントが行われた。書店や本を扱う雑貨屋など30店舗がそれぞれの趣向を凝らした売り場を作る。

 

【短編作品50タイトル】(右図)

熊谷さんが実際に読んで、面白いと感じた著者を中心に短編作品を集めたフェア。中には出版社でも絶版の超レア作品も。

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【個人イベントにも“五六書店”の名前で参加】
熊谷さんのあだ名”ゴロウ”と七五書店をミックスした”五六書店”。1.5m四方のスペースで、本に関する本を多く販売。

 
     

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おざわゆき(著)「あとかたの街」講談社

著者の母親の実体験を元に、戦中の少女の日常を描いたコミック。全5巻

 
 

戦後70年 名古屋の空襲を伝える
      

【戦争×文学/漫画】
 戦後70年をテーマに、小説や新書、コミックを集めたコーナー。意外と知られていない名古屋の空襲の歴史を伝える取り組みとして、地元紙にも取り上げられた。

 戦争と聞くと、広島・長崎・東京・大阪を思い浮かべる人が多い。実は、名古屋も多大な被害を受けた地域の1つなのだ。
飛行機の部品など、航空機産業を支える大きな工場が多いことから標的になっていた。

 おざわゆき著の『あとかたの街』には、七五書店のある瑞穂区から程近くに存在していた名古屋陸軍造兵廠への爆弾投下場面もある。

 

 

熊谷隆章さんのいちおし☆BOOKS

 
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 透明の棋士

 北野新太(著)

 ミシマ社

 
  

 

【作品紹介】

新聞記者である北野新太さんが、有名将棋棋士の対局を描いたノンフィクション。北野さんの視点で分析される対局は、駒の動かし方よりも棋士の心情を中心としている。将棋のルールを知らなくても楽しめる一冊。コーヒーと共に読みふけること間違いなし。

 

【オススメ理由】

北野さんが選ぶ言葉ひとつひとつから将棋・棋士への強い思い入れが感じられ、棋士という生き様が見えてきますが、暑苦しくはない。将棋の対局のような静かな熱さがたまりません。

 

 

 

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  こちらの記事はDAIWA LETTER48号に掲載されています
   
 

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