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戸田書店/高木久直さん

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【第18回】株式会社戸田書店 高木久直 さん

 

 

 ”力の一部を地域に向ければ、
 
本屋ってここまで減らなくても済むんじゃないかな”

 

 

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株式会社戸田書店 

静岡地区エリア長・掛川西郷店店長

 

高木 久直(たかぎ ひさなお) 

 
   

静岡県出身。42歳。
中学校の講師勤務を経て戸田書店に入社。入社1年という早さで菊川店開店店長に就任。書店は人類文化の縮図という観点をもち、本と関連する商品を組み合わせた独自性のある店作りを行う。これまで4店舗の出店を任され、現在掛川西郷店店長、静岡地区のエリア長を務める。

 
   
    
   
(※記事内容はすべて2013年1月現在の情報です。)  
 

2012年12月1日。静岡県内で営業する全ての新刊書店が投票権を有し、その投票結果のみで大賞を決定する静岡県書店独自のオープン文学賞、「静岡書店大賞」(SST)が発表された。

静岡県内の書店160店舗、609名という多くの書店員が投票に参加した。
取次の枠を越え多くの参加者を集めた、SST実行委員事務局長を務める高木久直店長に、書店業界に対する熱い思いを伺った。

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書店員になったきっかけを教えてください。

 大学卒業後、3年ほど中学校の講師をしておりました。教師の仕事は凄く楽しくて、天職だと思っていたんですが、なかなか正社員になれなかった。教員免許を持っているので、いつでも教師に戻れると、正社員枠で戸田書店に入社しました。この業界からはすぐいなくなるつもりだったんです。ところが、書店業って非常に奥深い世界だった。ここまでやれば終わりっていうのが無いんですよね。販売の工夫一つでいかように売ることも、魅せることも出来る。やればやるほど楽しくなってしまって、ずるずると15年の長きにわたって働くことになりました。

 

最も印象に残っているフェア、そこから学ばれた事を教えてください。

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今から10年前、オートバイ本のフェアをやった時に新車のハーレー・ダビットソンをバンと置いてアウトドアの本で周りを固めた。そうしたらまさかの200万円ハーレーが売れたんです(笑)この経験で、本は本屋さん、バイクはバイク屋さんという常識に囚われちゃいけないなと思いました。せっかくお客さんが店に足を運んでくれるんだから、本にプラスアルファで楽しんでもらいたいですよね。雑貨、玩具はもとより、楽器、オートバイ、ウエディングドレス…。コラボしたいなって思った企業には足を運んで飛込み営業をするんです。3割くらいは断られますが、当たるも八卦当たらぬも八卦。僕らの本業はやっぱり書籍の販売なのので、コラボ商品で稼ごうとしているんではない、大きなPOPだと思ってくれればいいんです。

 私が大切にしていることは「他がやらない、じゃあウチはやろうか。」という感覚。スタッフで何かやってみたいことがあれば遠慮無く言って欲しい。最近では歳のせいか、僕より若い従業員が書店員として一人前になったと感じる瞬間が何より嬉しい。本屋って価格競争ができない、じゃあ何が違うのかというとやっぱり人なんですよね。僕がいなければダメと言う考えはいけない。後進を育てるのが今の僕の仕事ですね。

 

静岡書店大賞開催に至った理由は何ですか?

 今年、総務省の統計調査で静岡県が、1世帯当たりの書籍購入額が全国ランキング38位と報道されました静岡っていうのは読書県だと思っていたので驚きました。朝読などにも力を入れていたので、これは僕ら書店のアピール不足だと痛感しましたね。そこで、企業単位ではなく、静岡のすべての書店が参加可能な企画はできないかと静岡書店大賞を立ちあげました。

 

 

これほど多くの参加者をどのようにして集めましたか?

 静岡を西から東まで歩き、知っている限りの書店に企画の旨をお話しさせて頂きました。しかし、僕の知ってる書店は50件くらいで、しかも取次がバラバラ。そこで7つある取次全ての説得に腐心し、結果私の書いた手紙と投票用紙を一斉に撒いてもらうことが出来ました。

 そしてもう1つ。大賞が決まったら商品は何部欲しいか、事前に、聞き取り調査をしました。書店大賞って本当にいろいろありますが、結局、話題本になればなるほど、町の書店には商品が入ってこないんですよそうすると、このような企画をやろうとした時に「大きな書店でやる話でしょ。発注しても入ってこないんだから。」って町の書店が置き去りになるんですよねね。だから、大賞が決まった瞬間、私と実行委員で、出版社に『静岡にある書店全体分』の商品を仕入交渉に行きました。そして、その仕入れた本は、小さな町の書店にも希望数が行き渡るようにと、7取次に割り振ったんです。

 そして160件の書店が参加してくれました。本当に驚きましたね。新刊書店だけで見れば、ほぼ全ての書店が参加しているんです。その中には通常児童書は置いていないが、静岡書店大賞の時は置いてみようという書店もありました。
 静岡県が読書推進に向かうこと。それは僕ら書店だけではなく官民一体となる事が必要だと、県知事にもお話させて頂きました。「静岡の各図書館でも連携してコーナー展開します。」と連絡があった時、静岡県が一丸となったのを実感しました。うれしかったですね。
 12月1日、静岡書店大賞発表と同時に、静岡の書店に一斉に静岡書店大賞の本が並ぶのです。

 

 

今後の展望を教えて下さい。

 まずは、これを機にSSTの本が全国に羽ばたいて欲しい。大賞を選んで終わりではなく、徹底的に販売していく、静岡の為に沢山刷ったのに返品されれば出版社も喜ばないですからね。もう一つ、SSTのようなことは静岡だけでやればいいって事ではないと考えてます。全国各地にやる気のある書店員が沢山いる。会社員だから自分の店を盛り上げるのは当然のことだけどその力の一部を地域全体に向ければ、ここまで本屋って減らなくても済むんじゃないかな。SSTは起爆剤、これを20代30代の若い書店員がやってくれればいいなと思っています。リアル書店の社会状況はあまり良い話は聞かないかもしれない。でも決して諦めて欲しくないんです。伝え方一つ変えるだけで紙の本屋はまだまだいけると思うし、僕は書店を楽しみたい。全国の書店員にエールを送りたいです。

 

 

 

 

 

       
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静岡書店大賞

大賞となる書籍は、小説の新作・児童書の新作・名作の3部門。児童書が大賞となるのは全国の文学賞でも珍しい。

「全国で書店数が減少している中で、一番縮小傾向にあるのが児童書です。読書文化の土台を担うのは子供たちなのです。紙離れが進んでいますが、将来活字を読む子供たちを今のうちに育てなければいけない。売れないという理由で子供たちの読む本を売り場からなくしてはいけないと思う。そういう願いを込めています。」高木

左図は、手書きの投票用紙のごく一部。メールでの投票は1割もなかったそう。

「PCもPOSも導入していない書店があります。開票は大変でしたが、だからこそおじいさんおばあさんがやってる書店にも参加してもらえました」高木   

 

 

 

高木久直さんのいちおし☆BOOKS

 

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 「旅猫レポート」

 有川 浩(著)

 文藝春秋

 
  

 

【オススメ理由】

作家とは切っても切れない猫文学。私の中で「吾輩は猫である」を超えました。猫目線で人間界をみた犬はの人でも涙するお話です。

 
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  こちらの記事はDAIWA LETTER36号に掲載されています
   
 

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