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啓文堂書店/西ヶ谷由佳さん

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【第20回】啓文堂書店 三鷹店 西ヶ谷由佳 さん

 

 

本屋は立地でも規模でもなく、

ささいな努力の積み重ね

 

 

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啓文堂書店 三鷹店  

西ヶ谷 由佳(にしがや ゆか) 

 
   

東京出身。文芸・人文・芸術・自然科学・コミックなど数々のジャンルを担当。「自称本バカ」その名の通り、商品知識は豊富。
地域、会社の枠を超えたセレクト文庫フェア「ナツヨム2013」(※)の仕掛け人であり、2012年の本屋大賞プレゼンターを務めるなど業界内でも広く活躍している。

 
   
 ※ナツヨムとは・・・

ナツヨムは、「地域も会社も超えた業界関係者による夏のセレクト文庫50冊フェア。」版元や書店員が自信を持ってオススメする1冊を選び、手書きでオビを付けるというもの。夏の文庫コーナーにはどこの店も同じものが並んでいる…との気持ちで西ヶ谷さんが発信したこの企画。去年は会社の枠を超え、全国24店の書店が参加したとのこと。

  
   
(※記事内容はすべて2013年7月現在の情報です。)  
 

太宰治をはじめ数々の文豪を生み出した、文学の町三鷹。

JR三鷹駅の目の前のビルに店を構えるのは、京王線・井の頭線沿線地域を中心に展開する「啓文堂書店」の三鷹店。

お店をのぞくと、棚や平台各所にPOPはもちろんフリーペーパーが置いてある。この売り場を手掛けているのが西ヶ谷さん。
気に入った作品は猛烈プッシュ、本にかける情熱と本屋を楽しむ気持ちは人一倍!そんな西ヶ谷さんにお話しを伺った。

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書店員になったきっかけを教えてください。

子供のことから本が大好きで、大学時代は支所を目指していました。でも現役では合格できず、とりあえず、来年の試験まで一年間は働こうと思い、アルバイトとして啓文堂に入ったんです。そしたら本屋の仕事は楽しくて私にとって天職でした。気が付いたら、何の疑いもなく自分は本屋になるのだと思っていました。
そのまま社員として働くことになり、今年で13年目になります。

 

今年5月から新たに三鷹店に異動したとのことですが三鷹ならではの取り組みはありますか。

多摩センター店から三鷹店に異動して感じたことは商品の動き方の違いでした。駅ナカである多摩センター店では新刊台から話題本が売れていくのに対し、三鷹店は棚から既刊本が売れていくお店なんです。そのため流行作家メインだった仕入れを見直し、文学などを好む三鷹のお客様にあった商品を選定するようにしました。文庫になった単行本も良い物は売れるので、返品せずに残すようにしています。実際に書評などを読んで選び抜いた商品はしっかり売れています。よく棚を通してお客様と話すと言いますが、まさしくその通りで、努力した分だけそれに応えてくださいます。こんなに楽しいことはないですね。また、三鷹といえば数々の文豪を生み出した町。太宰治をはじめとする三鷹ゆかりの作家や版元の商品をジャンルに限らず集めた「地元棚」にも力をいれています。こちらもとても反応が良いですね。

 

 

 

地元棚を見るとPOP以外にフリーペーパーが置いてありますが、あちらも西ヶ谷さんが?

そうです。その場では売上につながらなくても、持って帰って面白そうと思ってもらえる、要はお客様の来店動機になればという思いで作りました。多摩センター店では「クロネコ通信」というフリーペーパーを毎月発行していました。三鷹に異動してからは定期的ではないですが、お勧めしたい商品ごとにフリーペーパーを作っています。POPだけでは伝えきれないこともアピールできますし、効果的だと思いますね。実際、たくさんの人が持って帰ってくださり、次号の問い合わせなどもありました。紙面で紹介した作家さんが足を運んでくださりフェアにつながったこともあります。

 

               
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フェア台やオススメ本の横に置かれているフリーペーパー。

ビッシリと文字が書かれた紙面から、西ヶ谷さんの作品への熱烈な思いが伝わってきます。

しかもすべて手書き。

 

 

働く上で心掛けていること、大切にしていることはありますか。

半分趣味もありますが、本は1火1冊を目標に読むようにしています。地元棚に関してはゼロから作ったので、三鷹店に来てから三鷹についてかなり勉強しました。プロフェッショナルとして取材してもらっていますが、やっていることは普通なんですよね。当たり前のことを当たり前にやり続けるのが私の仕事だと思っています。本屋は立地でも規模でもなく、ささいな努力の積み重ね。それと情熱!
 あとはそれらの仕事を楽しんですること、もしくは周囲から楽しんでいるように見えるよう、心掛けています。そうすることで周囲の人を巻き込み一緒に仕事を盛り上げたいですね。

 

 

これまでの書店員人生で印象に残っていることを教えてください。

 お客様に「あなたがここに置いた本が私の人生を変えた」と言われたことです。
 その方は、「とても辛い経験をして、どうしようもなく落ち込んでいた。でもこの本に生きる勇気をもらいました」とお話してくださいました。その本はなんてことのない普通の小説でした。ただ凄く内容がポジティブで私はすごく良いと思って多面展開をしていたんです。それをたまたま見て手に取ってくださった。「落ち込んで本を読むこともできなかったがなんとなく魅かれたんです」とおっしゃって下さったのを聞いて、嬉しさと同時に、この仕事の必要性を感じました。
私がここに置いていなかったら、その方はこの本に出会わなかったかもしれません。3.11の直後「こんな時に、こんなことを書いてて良いのか」と言ったエンターテイメントの小説家さんがいました。でも、震災後に本を求めるお客様の声や、このお客様のお話を聞いて、やはり本も本屋も必要とされているんだと強く感じました。

 

 

全国の書店員さんに一言お願いします!

書店業界は暗い話題も多いですが、本や本屋の仕事が楽しいと思っている書店員さんは沢山いると思います。その気持ちをどんどんアピールしてほしい。本屋は楽しいんですよと何度も何度も大きな声で言うことで、本屋に人が集まるようになればと思っています。
そして実際に「この本屋にくると面白いことをやっているぞ」と思ってもらえるような努力を続けていきたいです。

 

 

 

 

 
西ヶ谷さんセレクト「地元棚」  フリーペーパー「文学のまちみかたMAP」
 

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地元棚に並んでいる本はただ単に三鷹ゆかりの書籍を集めたわけではありません。実は?!な本と本とのつながりが沢山仕組まれています。西ヶ谷さん作フリーペーパーがあればより詳しく「文学のまち」を探検出来ます。 

 

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西ヶ谷由佳さんのいちおし☆BOOKS

 

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 「重版出来!」

 松田 奈緒子(著)

 ビックコミックス

 
  

 

【作品紹介】

新人編集者を主役に、マンガ業界を支える裏方の仕事を描く職業ドラマ。

【オススメ理由】

出版業界はマイナスな事ばかり話題にされがちだけれど、本屋で良かったとこの仕事への誇りを再確認できるお話。
本の作り手、売り手、お客様がつながる瞬間が大好き。「売れたんじゃない売ったんだ。」というセリフに激しく共感できます。業界のネタとして面白いだけではなく、働いているすべての人に読んでもらいたい本です。

 
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  こちらの記事はDAIWA LETTER39号に掲載されています
   
 

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