ショップをハッピーに。
店舗業務を効率化する支援を行います。

  • DOWNLOAD
  • CONTACT

三省堂書店/秋山弘毅さん

☜BACK NEXT☞

 

 

【第21回】三省堂書店 企画事業本部 秋山弘毅さん

 

 

紙でも電子でも、「本」とお客様の

     接点を作るのは我々リアル書店だ

 

 

pro22-1.jpg  
三省堂書店 企画事業本部  

秋山 弘毅(あきやま ひろき) 

 
   

学生時代から書店で働いており、書店員歴は20年以上。
そごう千葉店・大丸東京店・神保町本店での販売経験を経て大宮店店長を務める。現在は、文房具や雑貨なのど非書籍を扱う商材開発室と電子書籍を扱う新業態事業室の室長を務め、書店で働く従業員にしっかりとした電子サービスの教育を行っている。

 
   
    
   
   
(※記事内容はすべて2013年10月現在の情報です。)  
 

 古書中心の本の街である神田神保町に本店を置き、日本で初めて百科事典を作成し出版も行っていた三省堂書店。創業明治14年の長い歴史と伝統でありながら、常に新しいサービスに取り組んでいる。時代の声に応えた本屋で買える電子書籍サービスは、紙と電子の共存となっている。

 今回はそのサービスを通じて、書店の持つ可能性・本の本質を追及し、リアル書店が電子書籍を販売できる環境作りに情熱をそそぐ秋山さんにお話しを伺った。

  pro23-2.jpg

どのような経緯で書店員になられましたか?

学生の頃に小売業に興味があり、書店を含めコンビニなどの色々なアルバイトを経験しました。その中でも、本を売るということが他のものと比べ、特に責任のある仕事だと学び、働きたいと思ったんです。本を扱う業界の中でも、よりお客様との接点が近い売り手である書店を選びました。
書店には何かを学びたい、始めたいというモチベーションの高いお客様が沢山いらっしゃいます。もし、品切れや接客の不手際があると、お客様の視界を閉ざしてしまう可能性がある。我々は先の世界を知る第一歩のお手伝いをしており、真剣にお客様に向き合う必要があるという事を今でも心掛けて働いています。

 

書店での経験から得た販売のコツはありますか?

前年の状況を把握することで今年の売上を予測し、昨対比を超えるために何をすべきか考えること。それが売上確保のコツだと思います。
 私は初めて店長に赴任した時から、毎日の売り上げ数字はもちろん、その日の天気や出来事を全て日記に記録していました。翌年それを参照することで売上の予測をしてきました。不思議なもので、その日の条件が同じならば、売上数字もほぼ同じになるんですよね予測した売上が目標のマイナス30万だとすれば、プラス30万の要素を加える必要があると分かる。そうすることで売上を確保できます。
 また、数字から現場の状態を推測することも売り場管理に必要です。例えば、通常であれば3冊売れる雑誌の販売冊数がゼロだった。それは、何らかの原因が必ず売り場にあるということなんです。雑誌の販売は棚整理がとても重要で、売り場が乱れていれば必ず数字に反映されます。実際に現場を確認するとその本が裏返しで置かれタイトルが見えなかったということがありました。このように数字を突き詰めていくと全てが予測可能になります。

 

 

商材開発室では書店の可能性をどのように活かしていますか?

書店では、本という「もの」ではなく「中身」を売っているという認識をすると、なんでも販売出来ます。例えば、音楽の本とスピーカーなど関連するものを結びつけると売れるんですよ。

 従来から本との親和性が高いと言われる文具を扱ってきましたが、今は本とは一番遠いところにある生鮮食品をどう結び付けられるかを自分に対する課題としています。その売上が立てられれば、間にあるものはなんでも売れると思っています。可能性はまだまだありますね。

 

       
pro21-3.jpg        

書店で販売した「盆栽」    

盆栽を始めるのに、最初から盆栽屋に行くのは敷居が高いと感じる人もいる。そこで、本屋で入門の書籍を購入し、且つ盆栽が購入出来たら良いと思い店頭に盆栽を配置。観光で訪れる海外の方へ日本のアピールも出来る。 

(三省堂書店 東京スカイツリーソラマチ店)

  

新業態事業室はどのような想いで電子書籍を扱っているのですか?

私たちは、電子書籍で儲けようと思っているのではありません。電子書籍を通じて読書する人間が増えれば良いという想いを持っているのです。
 電子書籍は、文字が小さくて読めない人、近所の本屋が無くなってしまった人にも読書環境を与えることが出来ます。字を大きくすることは紙の本には真似できません。本を読む手段がなければ、その時間はスマホなど読書以外の時間に充てられてしまいます。
 電子書籍を読書のツールとして提供することは、読書文化を育てること。ひいては我々リアル書店を守れるのではないか。ということが私たちの考えです。

 

今後の展望を教えてください。

紙対電子の構造を作らず、電子書籍を書店で販売出来る環境を作ることが大事だと思います。
 「電子書籍は敵対業種」と書店が認識していると、その市場はネットのものとなり、電子に慣れ親しんだ子供たちが育った時、書店は衰退してしまう。電子書籍も書店の商品とし、市場を書店のものとすることで、書店業界内で競争することが出来ますよね。
 実は、電子書籍には、ネット企業が対応しにくいマーケットが沢山あります。例えば、現在の電子書籍では、タイトルが完璧に分からなければ検索できません我々書店は店頭でお客様がタイトルを知らなくても本と出会える様に工夫してきました。それを電子書籍端末にも生かせば、お客様を獲得できる有利な立場に立てると思います。
 これまで、書店以外の企業が電子書籍を販売してきましたがあまり上手くいっていないのは、売り手の本に対する想いの違いではないでしょうか。本の売り方を一番よく分かっている我々書店だからこそ、電子書籍を成功させることが出来ると思います。
 紙でも電子でも「本」とお客様の接点を作るのは我々リアル書店だと思い、お客様の読書の時間を増やす事を目標に仕組み作りをしましょうと推進したいですね

 

全国の書店員さんに一言お願いします!

書店には活用しきれていないメリットがまだあると思っています。売場を離れた2年間、「本」の可能性や将来性などわかった事が沢山ありました。電子書籍を売るということは、「本」の本質とは何かを突き詰めなければならなかったのです。
 電子書籍を否定せずに受け入れて欲しいと思いますそうすると書店の可能性が見えてくると思います。

 

     
三省堂オリジナルブックカバー      
pro21-4.jpg      

「本読む楽しさが広がるなら、紙でも電子でもいいと思う。」     

電子書籍への想いが書かれている。本のイラストに混ざり、Lideoも描かれている。         

電子端末「Lideo」    
pro21-5.jpg  

世界最軽量170g約3,000冊を持ち歩ける。日本製の端末で使いやすく読みやすい。約10万冊の本が電子書籍化されている。もしも読みたい本が無くても、三省堂書店に行けば紙の本も揃っているので安心。

 

 

秋山弘毅さんのいちおし☆BOOKS

 

pro21-6.jpg

「Lideoで電子書籍化されています!!」

   

 pro21-7.jpg

 「赤頭巾ちゃん気をつけて」

 庄司 薫(著)

 中央公論新社

 
  

 

【作品紹介】

1969年に第61回芥川賞を受賞。この作品を第一作として、『白鳥の歌なんか聞えない』『さよなら快傑黒頭巾』『ぼくの大好きな青髭』が続く四部作。真面目で卑屈な主人公が、様々な不運を経験したことにより心持ちが変わっていくストーリー。

【オススメ理由】

芥川賞の作品は、非常に内容が難しかったり、表現が新しく分かりにくいものが多いです。その中で、初めて面白いなと思った作品です。作者の庄司さんはこの4部作を書いた以降小説を書いていないので、今小説を書いたらどんな作品になるのか気になります。また本を出して欲しいですね。

 
☜BACK NEXT☞
   pro21-8.jpg  
  こちらの記事はDAIWA LETTER39号に掲載されています
   
 

DAIWA LETTERは本屋さんと30年以上お付き合いのある当社が無料で発行している「本屋さんのための情報誌」!「プロフェッショナル」以外にも、新店オープン情報「OPEN!」、面白い取り組みをされている書店の特集「PICK UP!」など、さまざまな記事を掲載しております。

   ※記事中の情報は全て取材時のものです。                                                                               
   pro-bnr.jpgback-bnr.jpg