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丸善書店/沢田史郎さん

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【第25回】丸善書店株式会社 沢田史郎さん

 

 

 
”まずは基本が出来てから、 変化球はそれからです”
 

 

 

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丸善書店株式会社 津田沼店  

沢田 史郎(さわだ しろう) 

 
   

千葉県出身。書店員歴18年。
1996年某書店に正社員として入社。
店長として赤字店舗の立て直しや、既刊本の仕掛け販売などを積極的に行う。2009年丸善に転職。

 
   
    
   
   
(※記事内容はすべて2014年7月現在の情報です。)  
 

千葉県津田沼市、JR津田沼駅南口から徒歩1分の場所に位置する丸善津田沼店。売場面積約1,000坪蔵書冊数80万冊、県下一番の品揃えを誇るこのお店でお客さんと本とのより良い出会いを提供しているのが一般書部門担当の沢田さん。
今回は日々奮闘する沢田さんに仕事への思いと現在の取り組みについてお話を伺った。

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本にまつわるエピソードや書店員になったきっかけを教えてください。

大学生の時、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を何気なく読み、衝撃を受けました。坂本竜馬が暗殺されることは小学生でも知っていて、結末は分かっているはずなのにはらはらドキドキした。そして生まれて初めて本で泣いたんです。本当にびっくりしましたね。本って泣けるんだって。そして次に椎名誠さんの『哀愁の町に霧が降るのだ』を読んでみたら、これが我慢できず吹き出してしまうくらい面白かった。今度は笑えることにびっくりしました。もしかして本って漫画より面白いんじゃないか。そう気付いてからはどっぷり書店に通いつめていました。
 不思議と最初から書店で働く考えはありませんでした。しかし、初めて就職した会社を辞めた際、「本を扱う仕事であれば、少しばかり嫌なことがあっても続けられる」と思いこの世界に入りました。今年で書店員歴は18年目になります。

 

丸善に入社して5年、新たに始めた事や挑戦したことを教えてください。

入社当初、店長から「丸善は少し堅いイメージがあるので崩してほしい」といわれ、ずっと好きだった越谷オサムさんの『階段途中のビッグ・ノイズ』をワゴンに200冊くらいドカ積みし、『最後まで読んでつまらなければ返品承ります』と書いたパネルを掲げて展開しました。かなり思い切ったフェアですが、当時の店長もスタッフも異分子として入社した僕のすることを楽しんで協力してくれました。著者さんからは気が気じゃなかったと後から言われましたが(笑)。結果、1冊だけ返品がありましたが、累計で600冊以上を販売することができました。
 また現在、津田沼店では出版社に許可をとり、小説の『ゲラ』の冒頭部を冊子にし、「ちょいゲラ」(左ページ※1)として書籍の発売前に店頭で配布しています。
 こういったことはお店の環境によって出来る出来ないはあると思います。ですが、もともと本は買わなくても生きていけるもの。だとすれば、どこか遊び心をもった企画でお客さんの興味を引きたいですね。

 

 

店づくりで意識していることを教えてください。

普段滅多に本を読まない人でも気軽に入ることができる、敷居の低い本屋というのを意識しています。  あまり捻った陳列をしすぎてお客さんが本を探せないと意味がありません。あるべきところにあるべきものがあり、誰でも目的の本にたどり着けるゾーニング、その中で「こんな本あったんだ」というキラッと光る部分があるのが理想ですね。
 また、ベストセラーや新刊ばかりに頼らず、この店ならではの新しい発見ができるお店にしたいです。
 昔ある人に言われた「本は手にとった時が新刊」という言葉がずっと心に残っているのですが、はじめて読む人にとっては発行時期なんて関係ないんですよね。もちろん売上のバランスも考えて話題本は販売しないといけません。でも、自分のお店の一番オススメがどこの書店にもある話題の新刊、というのはなんだかかっこ悪いじゃないですか。確かに、既刊本は「知ってるけど買わない」というお客さんが多く、その理由をひっくり返すのは難しいことだと思います。でもそれをPOPやフェアでひっくり返すのが私たち書店員の仕事なんですよね。

 

 

   
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思わず本を手にとりたくなる文章のPOP。沢田さん曰くPOPを書くコツは「照れを捨てること」。

最初は恥ずかしくて書けなかった沢田さん。今では自分のPOPには必ずハンコを押してるんだとか!

今後の展望を教えて下さい。

今日はたまたま仕事が早く終わったから丸善によって帰ろうとか、買うつもりが無くても気軽にふらっとよってもらえる、そして『ああ良い店だな』と思ってもらえる店には時間を掛けてでもしていきたいと思っています。
 じゃあ具体的に何をしたら良いのか。挙げ出せばキリがないですが、接客、掃除、品揃え、陳列…一つ一つ当たり前のことを当たり前にやることが大事だと思います。ストレートがキャッチャーミットにいかないのに一生懸命カーブの練習をしても意味ないですよね。まずは相手にボールが届くようにする、基本が出来てから。変化球はそれからでいいんです。

 

 

全国の書店員さんに一言お願いします!

右肩下がりの業界、もしかすると楽しい事より苦しい事の方が多い時もあるかもしれません。でも、みんな一緒なんですよね。僕はそう考えて辛いと感じた時、悩んでるのは自分だけじゃない、みんな頑張ってるんだから自分もがんばろうと気持ちを入れ替えています。
 それに、最近ではSNSという飛び道具が充実し、10年前だと考えられないような繋がりを作ることが出来ます。その中で試行錯誤しながら頑張っている人を見ていると負けたくないという気持ちも湧いてきます。もう、仕事辞めたいなんてかっこ悪くて言えないですよね(笑)。良きライバルとして助けられていると思いますね。

 

 

 

 

     

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津田沼店フリーペーパーコーナー

 
   

同店のフリーペーパー『読書日和』を始め、他の書店さんのフリーペーパーなどが沢山置いてあります!

 

 

 
     
  
     

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小説のお試しよみ『ちょいゲラ』

 
   

当初、差別化を図るため津田沼店だけで配布していたちょいゲラは、現在フェイスブックなどで公開し、他の書店さんとも共有してるとのこと。
「本そのものが売れてくれればという気持ちで共有するようになりました。全国でブレイクすれば必ずうちでも売れますからね。」(沢田)

 

 

 
     

 

 

沢田史郎さんのいちおし☆BOOKS

 
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 「幽霊人命救助隊」

 高橋和明/著

 

 
    

【作品解説】

浪人生の高岡裕一は、奇妙な断崖の上で3人の男女に出会った。老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな若い女。彼らは自殺した幽霊だった。天国に行く条件は自殺志願者100人を救うことだった。地上に戻った彼らが繰り広げる怒涛の救助作戦。

【オススメの理由】

幽霊になった主人公達は、自分と同じように自殺しようとする人たちを説得するうちに、死んでから後悔しても遅いということに気がつきます。
 そんな中一人が発した「未来が定まっていない以上、すべての絶望は勘違いである」という言葉には本当にしびれました。
 心の描写が凄くリアルで読んでいて苦しいところもありますが、笑えるシーンは凄く笑えます。そして何度読んでも泣いてしまいますね。

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  こちらの記事はDAIWA LETTER42号に掲載されています
   
 

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