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紀伊國屋書店/内田委千弘さん

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【第9回】紀伊國屋書店 内田委千弘さん

 

 

 ”現場の結束力は1対1の会話から。

 
自ら率先して動くことで売り場は必ず変わります”  

 

 

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紀伊國屋書店 新宿本店
第二課 課長

 

内田 委千弘

 
   

愛知県出身。昭和39年生まれ。株式会社 紀伊國屋書店に入社後、約25年に渡り仕入担当から店長まで全ての業務を経験し、現在に至る。主に新店舗でのコミック売場の立ち上げに携わり、就任後2、3年で全国の店舗内でNO.1の売り上げを更新させるなど、その巧みな売場戦略とスタッフ育成で業界内でも注目されている。

 
   
   
 (2010年6月取材当時)   
 

新宿駅東口から徒歩3分の場所に位置する紀伊國屋書店 新宿本店は1964年のオープン以降、幅広い顧客層から愛され続ける大型書店だ。その中で、長年に渡ってコミック売り場を支えてきた内田課長に現場をまとめる上で大切なポイントと売場づくりの考え方についてお話を伺った。

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入社されてから現在まで、どのようなお仕事をされてきましたか?

本店入社後、新刊・文芸書の担当からスタートしました。それから仕入れセクションで5~6年勤務し、都内・関東近郊の数店舗で、学参・児童書・コミックなどひと通りのジャンルと業務を担当しました。その中でも新宿南店(新宿高島屋に隣接)のコミック売り場立ち上げの際の記憶はとても印象に残っています。

 

 

新宿南店開店へ向けて、苦労した点、一番力を入れた点などお聞かせ下さい。

 
 経験者数名、新規採用者が数十名という状況の中、どのような環境でも開店した以上はお客様にしっかり対応しなければとの思いで、時にはスタッフを厳しく叱ることもありました。もちろん、自分が間違っていることもあるので、その時はちゃんと素直に非を認め、謝ります。常にメリハリをつけ、嘘をつかないこと。そういった態度を見せることで、徐々に心を開いてもらいました。 店自体の特徴としては、「1階にコミック」という作りは当時画期的で、全店舗内でも注目を集めていました。周囲からの様々な意見や期待が集まる中、何も知らない自分たちがまず何からやれば良いのか、頭を練る日々が続きました。結果、第一に意識したのはとにかく「入りやすい」売り場を作ること。什器の色選びから始まり、隣接する高島屋自体に幅広い年齢層のお客様がいらっしゃるので、それに合わせて本の品揃えもオーソドックスながらしっかり幅広く揃えることを念頭に置きました。

 

 

 

 

 

数多くのスタッフをまとめる上で一番のポイントは何でしょうか?

 pro9-9.jpgやはり一番はトップに立つ人の意思が全体に伝わっているかどうか。南店もその実例のひとつで、意思疎通が上手にとれていたのでスタッフ間の結束力も強かったと思います。また僕自身が実践していたことで効果があったことは、毎日出勤してくる部下全員に1対1で話しかける事。ほんの数秒、どんなことでも構わないのでちゃんと目を見て話す。そうすることで社内の風通しがぐんと良くなるのを実感しました。毎日 ~ 人は出社しますが、自分の中での信念として欠かさず行っていました。 また、スタッフ間で具体的な目標を共有する事も大切です。当時の南店での合言葉は「とりあえず本店を抜こう!」(笑)そのためには、オーソドックスな品揃えだからこそ「どこでも売れるコミックをどこよりも多く売る」ことが課題になりました。そして実際に、開店後2~3年で本店の売り上げを抜くことができました。その時は本当にうれしかったですね。

 

(右図)落ち着いたブルーを基調に、明るく入りやすい印象の南店。

 

本店へ戻られてからのお仕事はいかがでしたか?

 本店へ戻り2年程経ったころ、店内全面リニューアルを迎え、コミック売り場も以前より大きく生まれ変わりました。その時の担当は児童書でしたが、尊敬する上司に「コミック大きくしたからお前がやれ」と指名を受け、再びコミック売り場を任されることになります。南店での過去と、ちょうど児童書の面白さにも目覚めた時期でもあったので、正直なところ複雑な心境でした。しかしやれと言われたらやるしかない。そこからは気持ちを切り替え、目標も「よし、今度は南店を抜こう」と考えるようにしました。ただ、実際にはそこからが大変。南店よりも大きい売り場、熟練されたスタッフが作り上げてきた歴史のある現場で、どうまとめていけば良いのか。そこでも役に立ったのが、これまでの経験を通して身についたコミュニケーションの心得。そうして日々奮闘する中で、熟練スタッフの強み(特化した商品展開)を生かしつつ、南店で効果のあった「入りやすい」売り場づくりのノウハウで、新しい本店らしさが作り出せたのではないかと思います。 結果、再び2年で目標通り南店の売り上げを抜くことが出来た時は、自分の中で大きな自信に繋がりましたね。

 

 

これまでの経験から、現在の仕事に対する思いや今後の展開等お聞かせ下さい!

 今日も多くの方が本を求めてやってきます。最近ではコミック売り場(別館)で「本館はどこですか?」と尋ねられ、ここまで成長したなぁとにやりとする場面も。 長年お客様に愛されてきた書店として、最上級の接客を心掛けることはもちろんですが、僕自身が売り場を見てきて思うことは、あまり型に当てはまり過ぎずお客様の年齢や来店された目的に合わせて柔軟に応対できるちょっとした「気づき」が肝心だということ。 また、品切れの言い訳を考える前に期待される品揃えをこれでもかというくらいに揃え、お客様の満足度を高めていく。そうやって日々部下たちと意識を高め合いながら、自らも成長できる現場でありたいと思いますね。

 

 

 

 

 

       
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内田さんは統括している本館2階には各フロアから選ばれたおすすめ書的のラインナップが。別館のコミックもここで紹介され、導線づくりのしくみに。

 

 

 

今年3月にオープンしたみなとみらい店 開店前の店内。オープン前には内田課長も立ち合い現場指導を行う。新店らしいモダンな内装。

 

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新宿本店の目印にもなっている入り口の新刊・話題本台。道行く人も思わず足を止めてしまう賑やかな印象。

 

 

 

 

新宿本店別館コミック売場。品揃えの豊富さは歴史ある本店ならでは。什器一つ一つにも内田さんのこだわりがみられる。

 

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内田委千弘さんのいちおし☆BOOKS

 
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 初秋

 ロバートBパーカー(著)

 早川書房

 
  

 

【作品紹介】
離婚した夫が連れ去った息子を取り戻してほしい。―スペンサーにとっては簡単な仕事だった。が、問題の少年、ポールは彼の心にわだかまりを残した。―人生の生き方を何も知らぬ少年と、彼を見守るスペンサーの交流を描き、ハードボイルドの心を新たな局面で感動的に謳い上げた傑作。

 

【オススメ理由】
とにかく文章の描写や表現が素晴らしく、一気に物語の中に入り込んでしまいました。ちょうど本店に入社した当時に出版された作品だったこともあり、自分の中ではとても思い出深い1冊です。同著者の「真相」もおススメです!

 
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  こちらの記事はDAIWA LETTER27号に掲載されています
   
 

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