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有隣堂/市川紀子さん

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【第33回】有隣堂 ビブリオバトルプロジェクトチーム 市川紀子 さん

 

 

 ”本を通して人を知る、人を通して本を知る
 
 ビブリオバトルの魅力はこの一言につきる”
 
有隣堂 市川紀子さん  
   
株式会社 有隣堂  

社長室 社長特命担当
ビブリオバトルプロジェクトチーム
市川 紀子(いちかわ のりこ) 

 

横浜市出身。短大卒業後、小売店に勤める。流通に興味を持ち貿易会社に転職。更なる高みを目指し輸入事務として有隣堂書籍外商部に入社。社会人サークル活動の中でビブリオバトルに興味を持つ。いつの間にか周囲を巻き込み同社の一大プロジェクトに。私生活でもボランティア団体「ビブリオバトル普及委員会」の関東地区副代表を務める。お酒と温泉が大好き。

  

   
   
     
 
   

 横浜に本社を置く株式会社有隣堂はまもなく創業110年を迎える老舗企業である。近年では書籍・文具販売業のみならず音楽教室やオフィスコーディネートなど幅広い事業を展開している。

 同社では2013年よりビブリオバトルに取組み、自治体・学校・図書館・企業とのコラボレーションによる様々な企画を生み出し、地域の読書文化の発展に努めてきた。今回はビブリオバトルにいち早く着目しプロジェクトの指揮を執る市川さんにお話を伺った。
  

株式会社有隣堂 
  
 

これまでの経歴を教えてください

 
 小売店で接客販売業務を10年ほど勤めた後、流通に興味を持ち貿易会社に転職しました。さらに英語を使った貿易の仕事を磨きたいと思い輸入事務として有隣堂に転職しました。当初は洋書・洋雑誌の手配業務を担当していましたが2年で異動になりました。その後文房具の仕入れ担当、ICT(※)推進事業部などを経験し、3年前に現在の部署に配属となりました。

 社長特命担当という部署は、直接的な特命としての新規事業の企画やリサーチ等を行う一方、有隣堂のブランド維持・強化を目的として店舗と図書館や学校といった自治体関連機関や企業、団体等の地域の人たちと連携し文化振興に努める活動も行っています。その中のひとつがビブリオバトルです。

(※インターネット・コミュニケーション・テクノロジーの略)

ビブリオバトルに取り組むことになったきっかけを教えてください

  
 もとは2012年にビブリオバトルを知り、個人的に外部イベントに参加したり、所属している社会人サークルの仲間に声を掛けて自主開催したりしていました。喫茶店の一角でコーヒーを飲みながらプライベート空間で行う小規模なものです。そのいくつかの取り組みが徐々に盛り上がってきたところで会社にも企画を出し業務としても取り組むことになりました。

 ビブリオバトルは、書店に来ても買わずに帰る方、ネットで本を買う方、そもそも本を読まない方にどうしたらお店に来て頂けるか、本に興味を持ち手に取って頂けるかということに対してとても有効です。また店舗以外の場所でも行うことで、地域に暮らす方々の顔を見て話し、関心事や行動範囲を知ることができる重要なイベントです。 

ビブリオバトルの魅力はどんな点でしょう

 
 「本を通して人を知る、人を通して本を知る」という一言につきます。これはビブリオバトルを2007年に考案された現在立命館大学教授・谷口忠大氏によるキャッチコピーです。(『ビブリオバトル―本を知り人を知る書評ゲーム』谷口忠大著・文春新書より)初対面の人とでも本が話のきっかけになります。本を介して人と人が繋がることが出来るのが魅力ですね。

 そして本を紹介するだけでなく、その後の観客と発表者(バトラー)の質疑応答が実はとても大切で、このディスカッションタイムが全体の盛り上がりを左右すると言っても過言ではありません。否定的だったりいじわるな質問はなし。「その本とはどこで出会いましたか?」「好きなフレーズは?」とプレゼンの中で出てこなかったことを掘り下げていきます。「ネタバレになるので読んでみて」と返すことも。観客から助け舟のような質問が出ることもあります。その質問によって知識の補填がなされさらに興味が湧くのです。その場全体で一冊の本を理解して新しい発見がある。そんなやり取りが醍醐味ですね。人数が多すぎると受身になりがちなので、20~30人ぐらいが和気あいあいと盛り上がります。

 また話が上手でも、有利ではあるけど必ずしもチャンプ本に選ばれるという訳ではないです。拙い発表でも熱意が伝わると「こんなに熱く語られる本とはどんな本だろうか、もっとこの人の話を聞いてみたい」と興味が湧きます。様々な本と人にスポットが当たる点がいいなぁと思います。

 

印象に残っているイベントについて教えてください

 
 昨年8月に小田原駅ビル・ラスカ小田原で行ったお酒イベント「ぐびっといこう!神奈川の酒・農と本を味わう会」です。神奈川の酒と農を伝えるフリー冊子『かながわ酒・農マガジン【goo‐bit ぐびっと】』を手がける「ぐびっと」代表の鈴木啓二朗さんから「何か一緒にやりませんか」とお話を頂いたのがきっかけです。蔵元さんや酒米農家さんもお呼びして酒造りを知ってもらう場にしようということになり第1部は「酒」をテーマにビブリオバトル、第2部は「ぐびっと」鈴木さん進行のもと蔵元さんと酒米農家さんの”酒農会談”、そして第3部は蔵元の工場長さんのふるまう燗酒試飲会という豪華企画を考えました。ラスカのイベント会場は原則飲食禁止なのですが、「お酒のイベントなのにお酒が飲めないなんて・・・」とラスカのご担当者様と相談し、特別にトライアルとして許可を頂けることになりました。そうなるとお互いノリノリで企画段階で楽しさが増し、蔵元の川西屋酒造店さんの作る銘酒「隆」と「丹沢山」を扱う同テナントの成城石井さんも巻き込んで試飲用のお酒の提供を頂けることになりました。

 イベント当日は定員30人が満席!ビブリオバトルは知らなくても「酒」というキーワードでお客さんが集まりました。蔵元さんたち地元の方々の繋がりからの参加もあり、お酒好き・本好きな人同士で賑わいました。地元のものを飲んだり話を聞いたりしながら、本を通して地元のことを知ることが出来るイベントになりました。お酒と本は相性がいいです。このようにビブリオバトルにプラスアルファで何か体験ができたらいいなと日々企画を考えています。

 

働く上で大切にしている事を教えてください

 
 何でも楽しむことだと思います。仕事は本気でやりますが、本気で楽しめないとやりたくない(笑)。本人が楽しそうにやっていれば周りも「面白そうなことやってるな」と興味を持ってくれると思います。見ているうちにいつの間にか巻き込まれているってことありますよね。そして楽しむ為には何でもやってみることが大切ではないでしょうか。以前は、自分は決まった仕事を定期的にやる方が性に合っていると思っていましたが、5年ほど前ICT推進事業部にいる頃にSNSに出会って考え方が変わったと思います。

 同事業部では当時企業がやり始めていたツイッター等を使った情報発信について研究をし、有隣堂での活用方法を模索していました。ツイッター、フェイスブック、mixiなどひと通り個人アカウントを開設し、セミナーにも出まくって勉強しました。その中で抜群に情報発信が上手な人がいることに衝撃を受け、個人でも世に発信し人や社会に影響を与えることが出来ることを知り、自分にも何かできるかもしれないと勇気が出ました。自己表現の武器を手に入れ、殻を破れたと思います。SNSは諸刃の剣で良い面も悪い面もあります。初めは怖い思いをしたこともありましたが、失敗をする内に感覚を掴んで、交流の幅が広がっていき、そのネットワークやノウハウを仕事にも活かせるようになりました。

 

今後の展望をお聞かせください

 
 ビブリオバトルをきっかけとして業界全体を巻き込むようなことにチャレンジしてみたいです。例えば絶版本や重版がかからず世間から消えていこうとしている本を復刊させるような。ビブリオバトルは読みたい本で決まりますので、ニーズが見えます。そこから復刊企画に繋げられたら、本にとっても読者にとっても作り手にとっても幸せなことだと思います。
 
 また書店対抗ビブリオバトルもしてみたいですね。書店ごとに強みや書店員さんの趣味思考が違うのでとても面白いのではないでしょうか。

 

全国の書店員さんに一言お願いします

 
 本の面白さをもっと外に発信していきましょう。他社だからとか競合だからと壁を作るのではなく一緒に盛り上がっていければ、本をより多くの人に届けられる、「本の世界って面白そう」と思って頂けると思います。さらには、本だけじゃなくて「書店員さんも面白い」とお客さんに知って頂きたい。面白い本を知っているのは絶対面白い人ですから、是非皆さんのお顔を見せてください。

コラボレーション企画をご紹介

  • 1

横浜銘菓×ビブリオバトル

◆テーマ:「大人も楽しい絵本の世界」  
◆バトラー:一般応募者
横浜銘菓ハーバーでお馴染みの老舗企業「ありあけ」本館カフェをお借りしてのビブリオバトル。ケーキとドリンク付の大好評企画。平日午後開催であいにくの大雨にもかかわらずキャンセルなしの満席!「ありあけ」さんの人気の高さを実感。カフェというリラックス空間でディープな絵本がたくさん出てきました。

横浜市教育委員会×ビブリオバトル

◆テーマ:なし  
◆バトラー:横浜市8区の地区予選代表者
横浜読書百貨展と称した読書活動を紹介する展示会で、横浜市教育委員会様とともに各区の代表戦ビブリオバトルを企画しました。。横浜市18区中8区が参戦し、事前の地区予選から勝ち上がった代表が渾身の1冊を紹介。当日は300名の会場が満席となり入場制限をするほどの盛り上がりを見せ、地元愛の熱さを実感しました。

文房具×ビブリオバトル in東京カルチャーカルチャー

◆テーマ「モノがたり ~文具にちなんだ本~」
◆バトラー:文房具界の著名人

【第1部】ビブリオバトル
 ・梶原治樹さん/株式会社扶桑社
    『文房具屋さん大賞』シリーズ 販売担当
 ・菅未里さん/文具ソムリエール
 ・たいみちさん/古文房具コレクター
 ・土橋正さん/ステーショナリーディレクター
       文具コンサルタント
 ・寺井広樹さん/試し書きコレクター
【第2部】2016秋冬イチオシ文具コレクション
 文房具メーカーさん最新・注目アイテム紹介!

一時期文房具仕入担当だったこともあり、その縁を活かし文房具の奥深さを広めたくて考えた異素材MIX企画。この企画を通して、ちょっと違った視点からの本の紹介、メーカーさんのこだわりや製品開発にかける情熱をユーザーさんに知って頂き、メーカーさんにもユーザーさんの反応を直に感じて頂くことができ、お互いの交流を楽しんで頂けました。(市川さん)

 

 

 

市川紀子さんのいちおし☆BOOKS

 
市川さんのいちおしBOOKS

   

 ドミトリーともきんす

 ドミトリーともきんす

 著 高野文子

 中央公論社

 
  


◆作品紹介◆
日本を代表する科学者4人がもし同じ屋根の下に住んでいたら…。科学者の目線から日常の不思議を紐解くコミック。 

◆オススメ理由◆
時間のかかることや目に見えないこと、不思議なことを感じる心をもっと大事にしようと教えてくれる。じっくり考えること感動を味わうことで培われる心の豊かさを伝えたい。登場人物の4人の科学者は優れた随筆家でもあり彼らの作品の読書案内としても最適の一冊。結論を急ぐ風潮の現代、実用的ですぐに役立つマニュアル本が選ばれがちですが、書店員として知を育む好奇心や想像する心を養う本もすすめていきたいなと思っています。

 

 

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   ダイワレター51号  
  こちらの記事はDAIWA LETTER51号に掲載されています
   
 

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   (※記事内容はすべて2017年5月現在の情報です。)                                                                               
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