ショップをハッピーに。
店舗業務を効率化する支援を行います。

  • DOWNLOAD
  • CONTACT

ビッグワン/内山貞男さん

☜BACK NEXT☞

 

 

【第11回】ビッグワン 内山貞男さん

 

 

 ”商売の神髄は、今も昔も変わらないと思います”
 
 

 

 

pro22-1.jpg  

株式会社ビッグワン 
取締役 営業部 統括部長

 

内山 貞男(うちやま さだお) 

 
   

新潟県出身。この道45年目のベテラン。新潟のブックセンター長岡で店長を務めた後、長野の平安堂では長野本店の立ち上げに携わる。7年前より栃木のビッグワンに入社、その後取締役に就任。現在は本・文具・カフェ部門を担当しながら、社員研修にも力を入れ、その活動の幅は広い。趣味は山歩きと野草の写真撮影。

 
   
 (2011年2月取材当時)   
 

栃木中心に大型複合書店を展開する株式会社ビッグワン。コーポレート・スローガンである『ONE AND ONLY(ワン・アンド・オンリー)』を合言葉に、 今後は「Book & Cafe」などを例に、新しいスタイルの文化の提案を目指す。今回は同社取締役兼営業部統括部長としてご活躍されている内山さんにお話を伺った。

  pro23-2.jpg

書店員になったきっかけを教えてください。

 

 工業高校を卒業後、電車のモータを作るメーカーに就職しましたが、大学受験を志し一年で退社、受験費用を稼ぐために始めたアルバイト先が書店でした。結局工業高校卒では大学受験に必要な教養科目にめっぽう弱く、二度受験に失敗したところで諦め、21歳の時アルバイト先だった書店にそのまま就職したのがきっかけです。

 

 

売場を任されていた当時の様子をお聞かせください。

 
 26歳の時、わずか30坪の小さな店の店長を任されましたが、常に「地方の小さな書店の店長」という引け目を感じていました。そんな時、【岡田徹詩集(ページ下部いちおしBOOKS参照)】に出会い、もし恥じることがあるとするなら、30坪にすら自分の思いを込められないことだ、と気づきました。そこで「あいさつ、きれいさ、親切さで日本一の書店」、自分自身は「日本一の店長になる』と目標を掲げ、全社員で一致団結。 また、休日を利用して各地の書店を回り、単品管理がいかに重要かを教わりました。当時はPOSレジもなく単品管理は至難の業でした。コミックを注文する時は「男の子のコミックを100冊送ってください」などと頼んでいたんですよ(笑)。そこで、売れる商品を切らさないよう独自で単品管理の手法を考えて実践すると、みるみる売上げも上がり30坪で年商一億円、更に駅ビルに出店した124坪の店では年商五億一千万を記録しました。 その結果、業界紙で取り上げられたり、講演の依頼が入ったり、また書店員向けの「単品管理の手引き」を取次さんから発行していただくことになりました。

 

 

 

 

 

書店員時代から現在に至るまで大切にしていることはありますか?

 

 私が一番大切にしていることは「商売十訓」という商業会の基本理念です。私が小売業界に入った時、これを徹底的に教わりました。
 一つ目に「損得より先に善悪を考えよう」とありますが、「損得」とは会社の都合のこと、そして「善悪」とはつまりお客様のご都合のことなんですよ。
 私は新潟にいる頃から、スリップを再利用してお客様からお聞きした要望を片っ端から書く、ということをしています。例えば、「トイレはどこですか?」と聞かれたら、それは(トイレをちゃんと分かるように表示してください)という言葉が隠れているのです。また現在では、POSレジがどこにでも導入されていますよね。ただPOSレジは売れているものは分かっても、売れていないものは分からない。でも人間は状況をきっちり把握できるから、見方を変えれば人間POSレジの方が優秀なんです。つまりお客様の見えない声をどうやって取り込むかということです。だから全部書くんです。そして、それらを一つ一つ潰していけばいい。顧客満足への取り組みの秘訣はそれしかありません。この活動は現在ビッグワンでも続けています。朝礼のときに社員間で情報共有し、要望を分類分けし、その後の経過を書き込むようにしています。これは「品切れメモ」と呼んでいるんですよ。「商品の品切れ」という意味もそうだし、お客様から要望があるということは「サービスの品切れ」ということでもあります。
 顧客満足の基本とは「お客様の望んでいることをすること」なんです。それをやっていれば自ずと売上げがついてきます。ほぼ全ての企業が「顧客第一主義」を掲げていますが、自分たちの金儲けの方便として使っている企業もたくさんあります。二宮尊徳は「道徳なき土に経済は育たず」と言っています。商売の神髄は今も昔も変わらないと思います。今、私がビッグワンでしなければならないことは「商売十訓」や二宮尊徳らの理念をどのように若い世代に伝えていくか、ということです。今風の言葉でね。

 

電子書籍が話題となっていますが、今後どのような書店が生き残ると思われますか?

 今の書店業界の売り上げは、5年後くらいまでに一割程度が電子書籍に移行すると予想されています。電子書籍が出始めたころは、紙の本が無くなるような論調もありましたが、ここへきて紙の本は絶対になくならないと言われています。
 電子書籍に向いているのは、雑誌、コミック、小説等の比較的内容が軽めの本や情報誌だと思います。例えば株価のことは、今の時代月刊誌が出るまで待っていられない。また、現在携帯電話で配信されている電子書籍の売上げは、コミックが約 割を占めています。
 その対極は専門書や、ビジネス書、学習参考書等。今後読み捨てのものが電子書籍に移行していく一方、「良い本」は紙の本として必ず残ると思います。とすると、「良い本」を中心に品揃えする書店は生き残る。
 ビッグワンは、今現在の品揃えの水準をちょっと深める、という姿勢でいきます。日々新刊が出て情報が入ってくる中で、いかに味がある棚づくりをしていくかが鍵。そのために市場の変化を睨みながら一つ一つに反応していくことです。反応していくところにしか情報は集まりませんから。当然客層が変わったり、競合他社が出てきたり・・・。近くにコンビニができたため売上げが落ちてしまった、と言っているようではダメです。質やサービスを高めることで「どうせ買うならあの店で」という「わざわざ店舗」になることです。
 そして、やはり「良い本」を見分けるのはスタッフの力量にかかっています。最後は人、全て人です。

 

 

     
47p-5.jpg         

内山さんが制作に関わった書店員向けの出版物の数々

 

    

 

 


 

 

 

印象に残った言葉は手帳に何でも書き込む

”世の中で一番難しいことは自分をしること
一番簡単なのは他人に忠告すること” タレス

「私は毎日一番容易なことをしているのだな、と反省・・・」

 

 

 

 


47p-10.jpg
 

 

 




POSレジのない時代の優秀な人間POSレジ(笑)


 

 

商売十訓

 

一、損得より先きに善悪を考えよう
二、創意を尊びつつ良い事は真似ろ
三、お客に有利な商いを毎日続けよ
四、愛と真実で適正利潤を確保せよ
五、欠損は社会の為にも不善と悟れ
六、お互いに知恵と力を合わせて働け
七、店の発展を社会の幸福と信ぜよ
八、公正で公平な社会的活動を行え
九、文化のために経営を合理化せよ
十、正しく生きる商人に誇りを持て

 

 

 



「商人はモノの価値を最大限に発揮できるように、間をとりもつ大切な職業です。誇りを持ちましょう、そして誇りを持てることをやりましょう」

 

 

内山貞男さんのいちおし☆BOOKS

 

pro21-6.jpg

 

   

 pro21-7.jpg
 「岡田徹詩集

 岡田徹(著)

 商業会

 
  

 

【作品解説】 

 

スーパーもチェーンも大専門店も、すべてはここから始まった―。「商売とは人の心の美しさを出しつくす業」とうたう感動の商人讃歌。『商店界』編集長などを務め、昭和32年に亡くなった著者の詩集。

 

【オススメ理由】
人生を変えた一句を紹介します。
---------------------------------
人の心の美しさを満たそうよ

小さな店であることを
恥じることはないよ
その
小さなあなたの店に
人の心の美しさを
一杯に満たそうよ
---------------------------------

「ちいちゃんのかげおくり」もおススメ!毎年8月になると、読み返して涙します。

☜BACK NEXT☞
   pro21-8.jpg  
  こちらの記事はDAIWA LETTER29号に掲載されています
   
 

DAIWA LETTERは本屋さんと30年以上お付き合いのある当社が無料で発行している「本屋さんのための情報誌」!「プロフェッショナル」以外にも、新店オープン情報「OPEN!」、面白い取り組みをされている書店の特集「PICK UP!」など、さまざまな記事を掲載しております。

   ※記事中の情報は全て取材時のものです。                                                                               
   pro-bnr.jpgback-bnr.jpg