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紀伊國屋書店/星真一さん

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【第25回】株式会社紀伊國屋書店 グランフロント大阪店 星真一さん

 

 

 ”本屋というのは私たちが感じている以上に、
 
何をやっても許される場所だと思います”

 

 

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株式会社紀伊國屋書店 グランフロント大阪店

店長 星 真一(ほし しんいち) 

東京都出身。
1994年に新卒で入社し、以来紀伊國屋書店一筋20年。シンガポールに2年間の出向経験を持つ。グランフロント大阪店の企画から立ち上げに携わり、店長に就任。
「学生から社会人になる為の橋渡しになれば」と社員だけでなくアルバイト教育にも熱心に取り組む。『大阪の本屋発行委員会』に所属。

 
 
 
(※記事内容はすべて2014年10月現在の情報です。)
 

JR大阪駅、大型商業施設グランフロント大阪の6Fにテナントを構えるのが紀伊國屋書店グランフロント大阪店。
近隣には業界屈指の売り上げを誇る梅田本店がある。駅前で利便性の高い梅田本店との差別化を図り、同店は文学棚や短歌詩集などを充実させ、ゆっくりと過ごせるよう椅子や机が設置されている。
お客様の声を反映させながらも紀伊國屋らしさを追求した店づくりを目指す店長・星さんにお話を伺った。

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書店員になったきっかけを教えてください。

 学生の頃、毎週日曜日になると駅に新聞を買いに行っていました。日経・朝日・読売・毎日…各社の書評を全て読むんです。それくらい本が好きでしたね。
 就職先を考えた時、ふと紀伊國屋書店には自分の好きなものしかないということに気付きました。その頃僕は演劇をやっていて、紀伊國屋ホールは演劇をする学生にとってあこがれの場所でした。本屋で劇場もあって、ここで働いたらさぞ楽しいだろうなって。甘い考えですけどね(笑)。以来20年間、紀伊國屋書店で働き続けています。

 

働く上で大切にしていることを教えてください。

 安易に本のことを悪く言わないということです。
 ここ10年くらいの間に、出版社と書店が一緒に本を販売していくような雰囲気が高まり、作家さんと会う機会が飛躍的に増えました。その中で感じたことは、作家さんも普通の人間だということ。作家、というと遠い存在に感じるかもしれません。しかし、やっぱり作品を褒められると嬉しいし、貶されれば悲しいんですよね。特に売り手である書店員の言葉は彼らを深く傷つけると思います。そして何より、たとえ僕が好きじゃなくても、その本を楽しみに待っている人がどこかにいるはずです。
 売り手として、プロとして安易にネガティブな事は言わない。それが、その本を届けようとしている人、買ってくれる人に対する礼儀なんじゃないかなと思っています。

 

店づくりで意識していることを教えてください。

 うちの店には「これをやってはダメ」という事がありません。スタッフが何か企画やフェアをやりたいと言えば基本的に許可をしています。その代わり、言ったからには必ず自分で実行してもらう。「言ったもん負け」とスタッフの中では言われています(笑)。ですがみんな凄く面白い企画を考えてくれますね。
 例えばこれまで、書籍の発売に合わせ、様々な関連商材の販売を行いました。雑貨、食品、キャラクターグッズなど、スタッフが新しい仕入先を見つけ、交渉も全て自分で行っています。
 また、関西にある古書店と、店舗の棚を貸し出す形で一緒にフェアやイベントを行ったりもしています。古書を扱うには警察に申請する必要があり、少し手間は掛ります。しかし、絶版本も扱えますし、新刊書店とは違う視点での選書はお客様にも楽しんで頂けていると思います。
 何かを思いついた時、出来ない理由を探しても仕方ありません。実現する為に何をどうすれば良いのか、一つ一つクリアしてきた結果が今のお店の形になっています。

 

今後の展望を教えて下さい。

 先日、大阪で働く書店員と取次の有志が集まり1冊の本を作りました。『西加奈子と地元の本屋』です。この本は企画、執筆、編集まで、すべてに書店員が関わって作成した本です。
 きっかけはスタンダードブックストア代表・中川和彦さんの「若い世代の書店員が遊べるプラットホームを作ろう」との声掛けです。現在、書店業界で何か発言をしていたり、著者や編集者と関係を作っているのは、40代以上の書店員が多いように感じます。今私たちは、20代30代の若い書店員がもっと自由に働ける雰囲気や、活躍できる環境を作っていきたいと考えています。この本をベースに若い書店員達が自由に活動の幅を広げていってほしい。
 そしてもうひとつ、今回の活動が、書店が地域でまとまっていくきっかけになればと考えています。今はまだ「出版=東京」で、東京で作られた本を全国の書店が売っている。ですが、食べ物や言葉にもあるように、本にも『地域性』があって良いと思います。大阪の書店が協力して大阪らしい本を作り販売していきたい。
 商売なので最後には自分の会社が残るんだという気持ちもありますし、競争もしないといけません。ですが、足の引っ張り合いをするのではなく、お互い良きライバルとしてみんなで上を目指して行きたい。そして、結果的に業界全体のレベルが底上げされて行けば良いなと思っています。

 

全国の書店員さんに一言お願いします!

 何か新しい事を始めたい人、分からない事のある人は一番最初に本屋にいらっしゃる。それは、あらゆる事が本に書いてあるからです。本というのは色んな所に繋がっていく扉みたいなものなんですよね。つまり我々は何十万という どこでもドア を扱っている。
 その僕らが本屋は本しか売ってはいけない、という先入観で働いていてはもったいない。
 本屋というのは私たちが感じている以上に、何をやっても許される場所だと思います。何を売ったってどこと繋がって行ったって良いじゃないですか。だってそれはどこかの本に書いてあることですから。

 

 

 

 

       
  
        
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ソルトコーディネーター青山志穂(著)『塩図鑑』と共に販売された100種類の塩。

 

 

『世界で一番美しいイカとタコの図鑑』と一緒に展示された超リアルなイカ模型。出版社に交渉して作ってもらったとのこと。

 

    
     

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紀伊國屋書店&古書店合同企画

「手紙がつなぐもの~拝啓 きみへ~」フェア

 

「手紙」をテーマに行われた古書店との合同フェア。
「書肆アラビク」・「トンカ書店」・「本は人生のおやつです!」の、いずれも関西で名のある3店舗が参加しました!
新刊から絶版本まで幅広い品揃えが出来るのは合同フェアだからこそ。7月には隣接カフェで同店のスタッフ、古書店店主、一般の方を交え『ブクブク交換』という名の文庫本交換会が行われました。もちろんカフェへの交渉は言ったもん負けのスタッフさん自らが行ったとのこと。

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星真一さんのいちおし☆BOOKS(番外編?!)

 
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 「西加奈子と地元の本屋」

 大阪の本屋発行委員会/編

 

 
  

~大阪で働く書店員が作った本ってどんなん?!~

食べ物や言葉にもあるように「本」にだって「地域性」があっても良いんじゃないか。そんな想いから大阪の書店員が集まり結成されたのが大阪の本屋発行委員会。そして、大阪を代表する作家・西加奈子さんの『円卓』が映画化されるのをきっかけに『西加奈子と地元の本屋』という一冊の本が出版されました!
「大阪を書くことは、ほんまはしんどい」か?と題した特集ページでは西さんとこれまた地元の作家である津村記久子さんが、大阪人であることはどのように作品に影響しているか対談しています。「二人の会話が本当におもしろくてコレだけで買う価値がありますよ!」と星さんのお墨付き。
他にも超ローカル書店員アンケート、なんでこの本、ウチでは売れるんでしょ?など地元色満載!内容から文章から大阪っぽいな~が溢れています。
中でもダイワ取材班が心打たれたのは「編集後記」。大阪の書店員さんの本屋に対する熱い想いがひしひしと伝わってきて胸が熱くなりました。是非ご一読ください!

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  こちらの記事はDAIWA LETTER43号に掲載されています
   
 

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   ※記事中の情報は全て取材時のものです。                                                                               
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