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”100坪の店のスタンダートとは何なのか、 |
ということを追求していきたい。” |
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大学在学中は映画漬けの日々を送っていました。当時は映画の隆盛期で、現在のようなレンタル制度も普及していなかったため、「名画座」を利用して年間200本ほど鑑賞していました。だから映画関係の職に就きたかったんですが、なかなか上手くいかないものですよね。書店と映画は直接マッチングはしませんが、映画から派生して出版業界には興味があったんです。そこで色々と採用試験を受けた中での選択肢の一つに書店がありました。
出版社を受けたりもしましたが、結局、郷土にUターン。ツテを頼って前橋の老舗書店の煥乎堂に入りました。以来、あれよあれよとこの業界で28年仕事を続けています。煥乎堂では店売畑一筋で、外商の経験はなく、その前に他業種の経験も無い。まあ、いわゆる書店員、カッコよく言えば、『書店人』、ということですかね。
現在、コミックは喩えるならば「市民権」を得ていますよね。私が業界に入りたての 年代は、 年代後半より続く第三次漫画ブーム※の最中で、雑誌に連載された漫画がコミック(単行本)化される過渡期のような時代でした。『タッチ』、『AKIRA』、『ドラゴンボール』とか…。
当時煥乎堂の三階に、通常は画廊として使っていた 坪程度のギャラリーがありました。そこでコミックのフェアを2週間ほど開催し、その頃発売されていたコミックの多くを展示・販売したんです。
それと同時に講談社・集英社等のスポンサーに広告を出してもらい、お客様に対して自作コミックの公募も行いました。特典として「入選したら冊子化する」、と。応募が無かったらどうしようかと心配していましたが、実際あったんですよ!件数は少なかったものの、何とか冊子を作れるくらいの質のものが集まったので、作ることが出来ました。
私が銘打った「もう私たちはコミック無しでは生きられない」というキャッチコピーがとても好評で、メディアの取材も受けました。このくらいの規模でコミックのフェアを行なうことは当時とても珍しかったんです。その少し後から、首都圏を中心にコミックの専門店ができ始めたんですよね。コミックを読むことは「貸本屋」が主流という時代の中、先取りのフェアとなりました。(※1977年『週刊少年ジャンプ』と『週刊少年チャンピオン』が発行200万部、週刊少年誌の推定発行金額が500億円を突破。この時期の漫画産業は右肩上がりの成長を続けた。)
企業としてTSUTAYAはレンタルという要素が強く、書店はその一部というイメージは拭えないと思います。さらに当社は親会社が書店業界と異なるため、売場作りはCCCの力添えが基本にあります。しかし、それを忠実に再現するだけでは個性が無いですよね。
荒牧店では「知と教養」という棚を作りました。要するに人文書コーナーです。普通ならハードカバーで揃えるんですが、100坪の店では限界があります。大型書店の 分の1のスペースで同じようなことはできない。そこで文脈は同じ流れでおさえた文庫や新書も並べて置くことにしたのです。1000坪クラスの書店となると、岩波文庫、岩波新書、中国思想…等、それぞれ棚がありますよね。例えば孔子の『論語』をキーワードに書籍を探そうとして中国思想の棚を探したとしても、実は岩波文庫の『論語』が一番核心を突いている、ということもあるかもしれない。先に挙げた棚割りでは抜け落ちてしまう危険がある側面を、我々の棚では補っていると言えます。これは私たちなりの創意工夫の過程であり、TSUTAYAの他店では行っていない取り組みのはずです。
100坪の店のスタンダードとは何なのか、ということを追求していきたい。店舗が小さくなればなるほど多品種少量の本のセレクトは難しくなり、深い商品知識が必要とされます。結局は単品管理に行き着きます。
100万冊売れる本もあれば、100冊しか売れない本もある中で、後者を活かすためにも売れる本を担保に商いを成立させるのが書店。売れないだろうな、でも売れて欲しいな、と思い仕入れた本がもしかしたら一冊売れるかもしれない、それが書店員の醍醐味。売れる本しか置いてない書店はつまらないですよね。一方で、自分が売りたい本だけ置いても書店員の独りよがりで終わってしまう。その匙加減がとても大切で、これらを上手く組み合わせて、お客様から支持されるお店となっていきたいです。
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~黄木さんプロデュースの棚~ TSUTAYA荒牧店独自の取り組みである「知と教養」の棚。店舗の規模に加えマーケット調査に基づき、ある程度エルダー層を狙う戦略からこの棚が生まれたのだという。 西洋哲学思想から東洋思想、日本思想へと繋がっていく。 |
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文化人類学とミックスされたような世界史コーナー。 |
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こちらも荒牧店独自。通常芸能人本が置かれるエンターテイメント棚にはシェイクスピアなどの劇作家や映画関連の本が並ぶ。 |
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