ショップをハッピーに。
店舗業務を効率化する支援を行います。

  • DOWNLOAD
  • CONTACT

谷島屋/中土居一輝さん

☜BACK NEXT☞

 

 

【第13回】株式会社谷島屋 中土居一輝さん

 

 

 ”数字だけでは計れない、売場の声も生かすことが
 
出来てこその営業本部である。”

 

 

pro22-1.jpg  

株式会社谷島屋 
営業本部 浜松営業部 副部長

 

中土居 一輝(なかどい かずき) 

 
   

浜松市出身。書店員歴12年。大学進学に伴い名古屋へ移り、卒業後はそのまま製造卸会社に入社。2年で退職した後浜松に戻り現職に就く。7店舗で店長を経験し、今年6月より浜松営業部副部長に抜擢される。趣味は野球。父の影響で大の広島東洋カープファン。浜松唯一の私設応援団団員にも名を連ねる熱の入れよう。

 
 (2011年8月取材当時)  
    
 

本年7月1日に市制100周年を迎えた浜松市。さらに遡った1872年、旧浜松町(現在の浜松市)に創業したのが谷島屋である。静岡県内に25店舗を構える老舗書店は“老舗意識を廃し新興店としての意気に燃え「常に新しい店」たらんとす”という企業理念の下、新しい事業に果敢に取り組む。今年6月、新たに本部経営の一員として加わった中土居さんにお話を伺った。

  pro23-2.jpg

書店員になったきっかけを教えてください。

 

 大学卒業後、海外勤務がしたいとの思いから、名古屋にある工業用品の製造卸会社に就職しました。そこで、一年ほどフィリピンのセブ島に管理者として赴任しました。しかし、一人に対して7LDKの住まい、メイド・運転手つきの現地での生活は人間をダメにするだけではなく、日本にいる友人との間に考え方・価値観の溝が生じてしまうことに危機感を抱き、自ら志望し帰国しました。
 2年で退職した後『最後の夏休み』と称して、貯金・退職金・失業手当で一年ほど国内・海外旅行の日々を送りました。一番印象に残っていることは、アメリカに 日間滞在し 試合メジャーリーグを観ようと毎日各地を飛び回ったことですね。 お金が尽きた頃、名古屋から浜松に戻り谷島屋でアルバイトを始めました。もともと本が大好きで小学生の頃から空き時間を図書館で過ごしていました。それがきっかけだったのでしょう。そのまま一年後に自然の流れで社員となりました。

 

 

店長として売場を任されていた時、印象に残っていることを教えてください。

 ららぽーと磐田店で、既刊本を再び売り込むことに成功したことです。『鋼の錬金術師』の作者で農業を主題とした『百姓貴族』というコミックエッセイがあるんですね。もう一度売りだす背景に①店が位置する磐田市は農業大学があったり農業への関心が比較的高いということ、②『百姓貴族』の出版社は町の書店では調べない限り辿りつくことが難しいということ、③ららぽーと磐田店の商圏は浜松・磐田・掛川に加え、高速道路直結のスマートICにより静岡から足を運んで下さるお客様もいらっしゃるほどとても広いため、一見さんも多く、このコミックの存在を知らない人がほとんどではないか、という分析がありました。
 幾度も試行錯誤を重ねて売り続けたところ、半年間で 冊ほど売ることができたんです。これはリピーターの多い書店では難しく、一見さんが多い書店ならではの戦略ですね。「この本見たことある?」、「この本も好きでしょう?」と、もう一冊手にとって頂けるような売場展開を目指していました。

 

 

 

 

 

本部での仕事の中身や、異動後の現在の思いを教えてください

 本部では主に仕入と店舗支援という二つの役割を担っています。まず、仕入では売れている本、売りたい本を見極め、スタッフが不足している店舗の仕入れを代行しています。僕がまとめて発注すればものの 分で終わってしまう作業を、例えば僕が担当の 店舗の店長が5分ずつかけて行うとしたら、これだけで 分のロスとなり非常に効率が悪い。これまで発注に費やしていた時間を店作りに充てることができますよね。
 店舗支援とは、書籍の並べ方、ディスプレイ方法など、店舗のアピール力を高めるサポートのことです。版元さんから薦められた本を本部で仕入れて、それを上から下に流すだけではなく、出来る限り月に一度は担当している店舗を全てを訪問し、外部の視点から売り方のアドバイスをしたり、逆に良いと感じたディスプレイは他店舗に紹介しています。(左ページ写真参照)
 本部に異動になってからも、またレジに立ちたいと何度も思います。パソコンがはじき出す数字で、全てを把握できるわけではありません。売場に立ち耳を澄ませば、お客様がどのような本を求めているのか聞こえてきます。ここは営業本部と売場(浜松本店)が直結している珍しい作りです。おそらく社長、専務も数字だけでは計れない、売場の声も生かすことが出来てこその営業本部である、という同じ想いなのだと理解しています。夏が終わるまでには未だ足を運べていない富士地区の店舗に行かなければ、と思っています。

 

 

今後の展望を教えてください。

 今話題になっている電子書籍について、私自身が使ってみた感想として実用書や専門書は向いているかもしれませんが、小説だと情景がつかみにくく物語に入り込めませんでした。全てが全て電子書籍になるわけでもないですよね。版元、書店、お客様…いろいろな方の意見を聞き、上手くバランスを取る方法を見つけていきたいです。
 もう一つ。常連さんだろうが、一見さんだろうが、親御さんについてきたお子さんだろうが…一冊でも多く手に取ってもらう、三回店を訪れたら、一度は買って頂ける書店にしていきたいです。そのためにも、特に児童書、コミックの中身をオープンにしていきたいです。子どもは表・裏の絵と何となくの口コミという限られた情報と、限られたおこずかいの範囲で本を選びます。中身を見られず、泣きそうな顔をしている子どもを見るのは辛いです。私は子どもの頃、どの本を買おうかと本を選ぶのに数時間もかかっていました。子どもが「本を選ぶ」という間口を広げてあげたい。そのためにもできるだけ多く版元さんから見本の冊子を仕入れたり、こちらで分かる範囲で中身を要約して示してあげたいと考えています。

 

 

 

 

 

       
pro21-5.jpg

 

 

担当している書店で目に留まったPOPは写真に納めて他店舗に紹介

 

 

 

 

コミックを途中まで読めるようにと愛情がこもった手作りの見本コミック

 

pro17-6.jpg

 

pro17-8.jpg

 

 

 

 

見本が多くあり、子どもの好奇心をくすぐる絵本コーナー

 

 

 

まるでここは広島か!?と勘違いしてしまうほどカープ一色。
「基本的に自分がいる店舗には導入」してきたそうで、これらを求めに遥々愛知の岡崎からいらっしゃるお客様もいるとか…!!  

 

pro17-9.jpg

 

 

 

中土居一輝さんのいちおし☆BOOKS

 

pro21-6.jpg

 

   

 pro21-7.jpg

 「ジェノサイド」

 高野 和明(著)

 角川書店

 
  

 

【作品解説】 

 

薬化学を専攻する大学院生・研人のもとに死んだ父からのメールが届く。傭兵・イエーガーは不治の病を患う息子のために、コンゴ潜入の任務を引き受ける。二人の人生が交錯するとき、驚愕の真実が明らかになる――。 

 

【オススメ理由】

ジェノサイドを日本語訳すると「大虐殺」。タイトルは怖いかもしれませんが、とにかく読み始めたら止まらない。一夜漬けで読破しましたが、その夜飲んだことを後悔しました(笑)伏線もしっかり張って あり、読後感も良い。是非一読してみてください。

☜BACK NEXT☞
   pro21-8.jpg  
  こちらの記事はDAIWA LETTER31号に掲載されています
   
 

DAIWA LETTERは本屋さんと30年以上お付き合いのある当社が無料で発行している「本屋さんのための情報誌」!「プロフェッショナル」以外にも、新店オープン情報「OPEN!」、面白い取り組みをされている書店の特集「PICK UP!」など、さまざまな記事を掲載しております。

   ※記事中の情報は全て取材時のものです。                                                                               
   pro-bnr.jpgback-bnr.jpg