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山下書店/髙橋佐和子さん

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【第26回】株式会社山下書店南行徳店 髙橋佐和子さん

 

 

”書店をお客様にとっての第2の家にしたい

 

 

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株式会社山下書店 南行徳店

橋 佐和子(たかはし さわこ) 

埼玉県出身。書店員歴7年。
大中小と規模の異なる書店での勤務経験から、どの規模の書店でも大切なことは接客だと気付く。積極的な声掛けや「お客様ノート」の作成など髙橋さんならではの取組みでお客様との信頼関係を築いている。現在、書店を第2の家にすべく、よりお客様に寄り添った店作りを目指す。
旅行が好き。世界遺産を見ると棚のイメージが広がるとのこと。

 
 
 
(※記事内容はすべて2014年1月現在の情報です。)
 

東京都と千葉県に11店舗を展開する山下書店。
渋谷南口店と大塚店は24時間年中無休で営業するなど、大型書店との差別化を図っている。
取材で訪れた千葉県市川市にある南行徳店は、2年前に居抜きで入ったばかり。南行徳駅周辺の商店による『南行徳笑天会』に属し、地域の活性化に取り組む。
今回は、丁寧な接客でお客さんだけでなく業界関係者からも注目を集める、スタッフの髙橋さんにお話を伺った。

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書店員になったきっかけと当時の様子を教えてください。

コンビニのアルバイトを経験し、お客様と話したり人と関わることがとても楽しく感じたことから、自分は接客が向いていると思いました。接客が出来ればどんな職種でもやりたいという想いで開いた求人情報誌の中で、光って見えたのが書店だったんですよ。そして650坪の大型書店に、1年間のアルバイト勤務を経て契約社員として入社し、児童書・地図ガイド・文芸書を担当しました。
 当初は絵本のラインナップや本の内容が分からず、問い合わせに対応出来なくて悔しい思いをしました。そこで毎日退勤後1時間ずつ残り、売り場の絵本棚を端から端まで読みました。とにかく周りのスタッフに追いつくことしか考えていませんでした。そのお陰で、オススメ本を複数提案し、その中からお客様自身に選んでもらう方法を確立しました。その経験を通じてたくさんの絵本に出会えた事は、山下書店で働いている現在も役に立っています。

地域の書店としてどのような取組みをしていますか?

南行徳商店街のイベントにあわせ隣の海苔屋さんとコラボフェアし、それぞれの店頭で、海苔と一緒に海苔に合う料理のレシピ本を販売しました。実用書の売り上げが伸び悩んでいたことに加えて、海苔屋さんの女将さんから「若い人にもっと海苔を食べてもらいたいなぁ」とポツリと相談を受けたことから思いついた企画です。結果として、海苔17缶とレシピ本7冊が売れました。
 売り上げとしては大成功とまではいきませんでしたが、海苔屋さんからは、「当店に来た事のない山下書店のお客様が来て下さった事は、とても嬉しかったです。商店会として協力し合う事で、心が寄り添えましたね。」との感想をいただけました。また商店街の他のお店の人にも「面白いことをする本屋だね。」と言っていただき、改めて山下書店を認識してもらえたという点では大成功でした。

働く上で取り組んでいることや工夫していることを教えてください。

重複購入をしてしまったという常連のお客様の声を聞き、購入履歴や会話の内容を記入した「お客様ノート」(※1)をつけ始めました。ノートを確認することで重複購入を防げますし、読んでいるシリーズの入荷数が少なければ、お取り置きをしています。
 また、お客様が困っていれば自分から声を掛けられるように、棚整理をしていても周りを見るように意識していますね。
 棚やラインナップも「この棚替えたんですけど、どうですかね?」と直接お客様に意見を聞きコミュニケーションをとっています。
 繰り返し声を掛けていると、お客様は徐々に心を開いてくれます。1年前は全く話してくれなかった女の子が今では進路相談をしに来てくれたり、一言も口を利いてくれなかった男の子が、ある日ほっぺにチューをしてきた時は天にも昇る気持ちでしたね(笑)

お客様とコミュニケーションをとるようになったきっかけを教えてください。

書店員になったばかりの頃の話です。接客がしたいと思って書店に入社したはずが、当初は接客どころではありませんでした。大型書店では児童書の棚は整えているそばから荒れていき、書店員というよりも、売り場の清掃員となっていました。ちょっと本屋がつまらないと思ったぐらいです。

 始めは、子供がスリップを抜いていても、隣で黙って戻していました。ある日、その子供に「おねぇちゃんが片付けているんだけど、どうしてよごしていくの?」と声を掛けてみたんです。最初は無視されましたが、「ちょっと手伝ってみない?」「きれいにしてくれてありがとう。」など少しずつ会話を重ねて行くうちに仲良くなり、よごすのをやめて一緒に売り場を片付けてくれるようになりました。嬉しかったですね。「あ、会話をすれば通じあえるのか」と、その時初めて気付きました。

お客様対応で印象に残っていることを教えてください。

エジプトから来たお客様の問い合わせに対応した際、お礼にパピルスで出来たしおりをいただいたことです。
 その方のお探しの本は当店にはありませんでした。しかし、明日帰国されるとのことでしたので、絶対に本日中に渡したいと思い、近隣の他の書店に電話で問い合わせてやっと在庫のあるお店を見つけました。問い合わせを受けてからそのお店への地図をお渡しして、送り出すまでに30分以上かかってしまいました。ですが、しおりをいただいた際、言葉は分からなくても本当に感謝してくださっていることが伝わってきました。時間よりも『本を渡したい』というこの想いを大切にしたいと感じた瞬間でした。

 

全国の書店員さんに一言お願いします!

私が、悩んでいる時に「頑張れ」「ひとりじゃないよ」と励まされるのは、他店の書店員さんが想いを込めて作った棚や素敵なフェアとの出会いです。また本屋さんだけでなく出版社や作家さんからもさまざまなヒントをいただいています。この業界はとても温かく素敵だなと思います。いつも感謝をしています。私も人を励ますことができる書店員でありたいなと思います。負けていられません!
 私の夢は書店をお客様にとっての第2の家にすることです。辛いとき、泣きたいとき、ここに来て元気になってもらいたい。山下書店南行徳店を「温かくてなんか良いな」と思ってもらえるお店に出来るよう頑張っていきたいと思います。

 

 

 

     

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お客様ノート ※1
    

【常連さんの情報が詰まったお客様ノート】

お客様の「重複購入してしまった!」という声を聞いて、つけ始めたノート。

お客様の購入履歴はもちろん、レジで
の会話内容で得たささいな事も細かく
記録。お客様のその日の体調なども書いてあり、
まるで医療カルテのような情報量。
髙橋さん以外のスタッフが対応した際には、
会話内容をメモで残し、共有するようにしている。

   

お客様目線になって作る棚

 

【店内の一角にある児童書コーナー】
子供が見る児童書の棚は、必ずしゃがんで棚を見上げ危険が無いか確認をしている。
以前、子供の「こわーぃ」との声に、急いで駆け寄ってみたところ、上段の厚めの本が落ちてきそうだと教えてくれたことがあった。それ以来、上段は面陳を基本にしている。
また、ベビーカーを押していても手に取りやすい位置に本を陳列するなど、お客様の目線になり、安心して買い物が出来る工夫をしている。

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髙橋佐和子さんのいちおし☆BOOKS

 
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 おめん/ポプラ社

 わだことみ(作)

 ささきようこ(絵)

 
  

 

【作品紹介】
半月型の絵本。持ち手と目がくりぬかれ、開くとおめんになる。1ページごとに柄が異なり、ライオンや犬などの動物に変身できる。最後のページには驚く仕掛けが…!

【オススメ理由】
「ばぁっ」って店頭でしてあげると、一番喜んでくれる絵本です。以前、この本を購入したお母さんが実際にお店の外で泣いているお子さんをあやしていました。2人とも笑ってくれた瞬間がとても嬉しかったですね。

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  こちらの記事はDAIWA LETTER44号に掲載されています
   
 

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