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明正堂/増山明子さん

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【第28回】     株式会社明正堂アトレ上野店 店長 増山 明子さん

 

 

”「気づき・考え・行動する」誰でも仕掛けて良い”

 

 

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増山 明子(ますやま あきこ) 
 

埼玉出身。書店員歴16年。
大学時代に軽い気持ちで働き始めた書店。50坪のコミック売り場を1人で担当したことで、書店の奥深さや売れる原理に気がつく。その後、雑誌・文庫・時代小説などの売り場を担当。1枚のPOPで全国1位の販売数を叩き出す程のプロ書店員にまで変貌をとげた。現在は店長として社員教育を行うかたわら、明正堂のブランド力強化に力を注ぐ。

 
 
 
(※記事内容はすべて2015年8月現在の情報です。)
 

パンダ・アメ横と言えば誰もがわかる東京・上野。ここには3月に創業103年を迎えた老舗書店の明正堂書店がある。
駅の利用者数はなんと1日63万人。通勤・通学・買物・旅行など様々な利用者が集まる中、特に朝夕の会社員・学生は店舗のメインターゲットとなる。今回はPOPやフリーペーパーを用いて、忙しいお客さんでもガッチリと心をつかむ、増山さんにお話を伺った。

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入社した当時のエピソードとその時に学ばれたことを教えてください

学生時代にアルバイトをしていた小さな書店が楽だったので、卒業後も軽い気持ちで大手書店に入社しました。
 知識がなくとも1年間、アルバイト時代と同じように単純作業をしていたら、仕事内容が見えてくるだろうと高をくくっていました。しかし甘かったです。
 入社3日目にして50坪のコミック売り場を任され、大量のコミックを誤って発注し入荷してしまったのです。その時スタッフ全員が誰も怒らず黙々と包装してくれて、本当に申し訳なくていたたまれなかったです。社員から「返品するより、売り場に並べて、1冊でもいいから売りなさい。」と言われ、このままではいけないと目が覚めました。この失敗で1日の販売額から冊数を割り出し、棚スパンに置きかえ、次の発注の目安にする具体的な発注方法を学びました。漠然と仕事をするのではなく、自分の給料分の働きを意識するようになりました。失敗から多くのことを学びました。
 本の並べ方やPOPを使った展開など様々な慣習やテクニックで売れ行きが変動することに、大げさかもしれませんが、宇宙を感じましたね(笑)自分にはもっとやることがあると、手書きのフリーペーパーや本の帯の制作を始めました。休日でもPOPを書き、年間で100枚は書きましたね。
 その後、書店員を辞めた時期もありましたが、自分で棚をプロデュースできる書店がやっぱり良いなと思い、現在の会社に入社し仕事一色に染まっています。楽な人生ばかりを考えていた自分が、今ではこんなにも本を売ることに喜びを感じる仕事人間です。本を売ることが快感ですね(笑) 

 

売り場作りに関して、具体的な取組や工夫について教えてください

いつでも自分の中に「原理原則」という基準を作りものごとを考えています。 自己満足ではなく、売るために自分しか作れない 本が売れるPOP”はどのようなものか、原理原則を考えそれに従っています。
 例えば帯が主流になる前には、本の内容を知ってもらうため、1つ1つを綺麗な字で細かく書いていました。しかし、帯や裏表紙にあらすじが書かれている今は、時間をかけず、お客様の興味を引く工夫をしています。大きな文字で遠くからも目立つように作っていますね。立ったまま3秒で書くこともあります。
 また新人作家さんの場合には、この作品で作家として巣立ってくれたらいいなという期待を込め、有名になるまで展開を続けることがあります。その場合POPには「オススメです」と書くのではなく、「この点が良いですよ!一緒に応援しませんか?」という、作家さんにファンをつけるような書き方をします。
 お客さんが自然と興味を持ち、手に取り、読んで「自分はいい本を買ったな」って思っていただけるように、そっと買わせる展開をするのがプロの書店員だと思います。

 

仕事で意識していることを教えてください

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「気づき・考え・実行する」。自分が何をすべきかを考え、誰かに指示されなくても実行することです。小学校の校長先生の言葉で、座右の銘にしています。 

  この本は売れる”という気づきの感覚を養うには、日常の会話やテレビCMからの情報・世界情勢や流行している映画、話題の雑誌、何にでも感心を持ち、POPやフリーペーパー(右図)のヒントとしています。

 さらに、どうせフリーペーパーを作るならば明正堂のブランド力となる程の高いレベルを追求しました。版元さん作家さんにも協力をいただき、A4両面にびっしりと情報を載せています。購入特典として、本に挟み配布しています。持ち帰り大事に読んで保存して欲しいなと思って作っています。

 黙っていてはお客さんは来てくれません。これからの時代はどれだけアイディアを実行できるかが大

切になると思います。店長の私だけでなく誰でも実行し、仕掛けて欲しいです。スタッフのその能力を伸ばすことが私の仕事です。

 

インショップとして意識している点を教えてください

当店は駅ビルのアトレに入っているので、アトレ会員の獲得や、抜き打ちチェックなど、高い接客・販売レベルが求められています。明正堂とアトレの2つの看板を背負っている、その意識をスタッフに持たせるのが店長の役割です。
 1年前に私が店長となってから、自分に毎日の仕事を20個挙げさせて消化することを課しています。また書店員はオススメの理由を言えなくてはいけません。「面白いですよ」の一言ではつまらないですよね。理由を30文字、50文字、100文字とパターンを変えて書く訓練もしています。
 他のスタッフにも売り上げ金額、売れた冊数、入荷冊数をどんどん質問して答えさせます。すると仕事の早さも書店員の感覚も上がります。鬼軍曹ですよ(笑)
この1年間で、集合や書類提出など早くなり、みんながお店を支えてくれているのを感じますね。

 

全国の書店員さんに一言お願いします!

書店を1店舗でも多く残せるように書店・取次・版元が一体となり仕掛けをしていきましょう。トークライブをするにしても、本の魅力を共有するだけでなく、経営者を呼び経営者の意志も伝えるべきです。次のステップへ進みたいですね。
 私達は本にしがみついてばかりいてはいけないなと思います。見た目は優雅に泳いでいるけれども、水面下では一生懸命に水を掻いている水鳥のように、書店を商いながら、どう利益を得るかを一生懸命に考えて実行し、書店を継続させていきましょう!

 

 

 

 

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▲ジモトクHPトップ

http://jimotoku.tokyo/

 
本屋業以外もやっています!
 

【明正堂が運営する地元情報サイト“ジモトク”】

コンセプト
①地元上野、自分たちが自信を持ってご紹介できるお店を 知っていただく
②上野で新たな発見をしていただく
③見て面白いサイトを作る

 

ディープな上野の美味しいグルメ情報を毎月更新。実際に社員さんがお店に向かう心境から、食べた感想までブログ調でレポート。本屋業以外もやります!

   

POPギャラリー

 

【更新されていく、祝○○冊!】

店内奥にある作業スペースには、これまで仕掛けてきたPOPや著者さんからの色紙達が壁面にずらっと貼られている。
POPには1つ1つ販売冊数が記録され、冊数が伸びると上書きされていく。上書き前の冊数をこっそりと確認されるお客さんもいるほど注目を集めている。出版業界への応援を込めて始めたPOPが、今では明正堂を表すブランドの1つとなっている。

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これまでに最も販売した作品、なんと,8897冊を記録!

「100回泣くこと」中村航(著)/小学館文庫                                        

冊数を記入している部分だけ、上から貼り直す。

すごい冊数なのに、主張しすぎない点にもこだわりを感じます。

 

 

増山明子さんのいちおし☆BOOKS

 
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 BEソーシャル!
 社員と顧客に愛される5つのシフト

 斉藤 徹(著)

 日本経済新聞社出版

 

 

【作品紹介】
SNSに依存する現代の消費者に対して、求められる企業の姿を、豊富な企業事例を紹介しながら解き明かした一冊。365ページの中には、組織作りのヒントが詰まっている。

【オススメ理由】
店長や中間管理職の方に特にオススメです!本屋を世の中から消さない為に、社内改革や経営革新など、自分達が実行すべきことが見えてきます。脳みそが変わる1冊ですよ。

 

 

 

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こちらの記事はDAIWA LETTER46号に掲載されています
 

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